東日本大震災後も日本各地で災害が相次いでいますが、災害後に活動するNPOの中間支援機能について、現場の方々にヒアリングさせていただいた結果を、報告書にまとめることが出来ました。
石巻の復興過程及び緊急支援における中間支援機能ヒアリング検証報告書(3.9MB)
昨年度に聞き取りさせていただいたのに大変遅くなってしまいましたが、連携や伴走に留まらず、災害後の激変に対応して「変化」が起こせたか(チェンジ・エーエージェント機能が機能したか)に着目して、検証させていただきました。
3.11後の石巻、9年後の石巻、そして、熊本地震や平成30年7月豪雨などの災害後に、全国レベル・県レベル・市町レベルで中間支援の役割を果たされた方々にヒアリングし、実名で回答いただいています。
結論部分だけを引用すると、20組織への聞き取り事例から、以下の必要性を見出すことができました。
1.良い方向に変化させる「チェンジ・エージェント」機能の必要性 本検証で着目した「チェンジ・エージェント機能」が、震災直後や復興過程の中間支援に関する団体・個人で具現化していたことが確認された。災害がもたらす甚大な変化に応じて多様な関係者の協働を促すためには、組織・活動の両面において、覚悟や主体性を持って動的に「変化」を促す機能の有効性が示された。
2.課題や目的意識共有の必要性 現場の当事者は、地域住民・支援者・行政などの複数セクターと、課題や方針を共有できる場を創り出す姿勢を意識していたことが確認された。外部環境が急速に変化する現代社会においては、当初の想定通りの成果(アウトカム)が生み出せないことも有り得るが、信頼関係の蓄積により被災者が支援者へ転換にしたり、地域で課題解決のために協働で歩み出す過程(スループット)を生みだすケースが確認された。
3.中間支援の対象範囲や支援フェーズの変化に応じた意識的な変革の必要性 全国、県レベルの中間支援の役割は市町村レベルとは明確に異なり、対象範囲が広いほど抽象度が高く、課題把握や制度への定着が求められていた。また、緊急期においては異なるセクターを受容して変化を促進する役割が重要視されていたが、震災9年目には、課題を可視化して協調的に連携を推進する役割の重要性が示唆された。
4.被災地域の各支援団体が構成員として参画可能なガバナンスの必要性 被災地の課題把握不足や支援団体との連携欠如を招かないよう、被災地から離れた県庁所在地などに中間支援拠点を置く場合は特に、現地の支援団体が会員や理事などの構成員として議決権を持って意思決定に参画し、地域を代表できるような開かれたガバナンスが必要であり、中間支援組織の重要な要件であることが示唆された。
5.新たな中間支援施策と、それを創発する官民協働の場の必要性 今後の広域災害に備え、災害支援や復興支援の経験共有と、平時の中間支援の資質向上の双方を実現するために、組織の変革を促し得る人材育成制度が必要である。 また、指定管理などの平時のNPO中間支援を第1段階とし、災害ネットワークづくりなど「変化」を促した場合に第2段階の対価を支払う成果連動型委託や、補助や委託の前提として市民側の自発的な参画を必要条件とする制度の可能性も示唆された。 現行の中間支援組織や制度への危惧を抱く回答が多く、民間の自主性を支える公的な支援制度の在り方そのものを官民協働で検証し、創発してゆく場が求められる。 |
調査の対象が少なく、また、検証の掘り下げ不足の点もあり、私たちの力不足によるものですが、現場で活動してこられた方々の生の声を元に、反省点にも向きあって言葉にした報告書は、これまで余りなかったように思います。
本報告書の作成にあたり、ご協力いただいた皆様に改めて感謝申し上げます。
当法人も、これだけの大規模災害への初めての対応で、多くの失敗を重ねてきたため、同じようなことが繰り返されないよう、少しでも参考になれいば幸いです。