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2020年東日本大震災伝承活動調査報告書

伝承を支える

大変遅くなりましたが、東日本大震災の伝承施設、震災学習プログラムの昨年の現状を調査した報告書を公開いたします。調査にご協力をいただいた震災伝承施設、伝承団体の方々に感謝申し上げます。

(報告書ダウンロード→)2020年東日本大震災伝承調査報告書
(2020年8月30日 公開
 2021年9月13日 復興庁R4予算に関する追記や誤字修正により差し替え)

 2020年度震災伝承調査(速報分)のご報告にて、各施設や団体の受入れ実績数値は速報させていただきました。

 2019年に比べて2020年の受入れ実績は大幅に減少していますが、現在も、新型コロナウイルス感染症の影響は続いており、施設の休館や、せっかくの教育旅行の延期やキャンセルが相次いでいます。

 このような深刻な状況を受けて、アルコール消毒や受入れ停止などの対応がなされた他、オンライン配信の取組も増加の傾向が見られました。

 

 あわせて、発災直後から「復興構想7原則」や「復興への提言」に掲げられてきた「教訓の伝承」や「地元との連携」が、この10年間でどの程度実現したのか、アンケート回答を報告書にまとめました。

復興構想7原則(2011年5月10日 東日本大震災復興構想会議)

原則1:大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、
その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する。

復興への提言(2011年6月25日 東日本大震災復興構想会議)

地震・津波災害、原子力災害の記録・教訓について、中核的な施設を整備した上で、地方公共団体や大学など地元との十分な連携を図り、さらに官民コンソーシアムを活用した保存・公開体制をつくり出すべきである。

 上記の「復興構想原則1」と、「復興への提言」の緑色文字部分について10年後の実現度合を5段階で質問したうち最多の回答を、行政・観光協会29組織と、民間・震災後設立団体22組織で整理したものが下表です。

 次世代への伝承に関しては、同様の傾向でしたが、「連携」「官民コンソーシアム」については、傾向が大きく異なりました。

 その中で「地元との十分な連携」の実現度に対する回答は、下グラフの通りで、「そもそも、連携の意味が民間と官では違う」との記述回答にもあった通り、立場によって認識のズレがあることが確認されました。

 発災から10年を経て社会の関心も低下する中、新型コロナウィルスによる多大な影響があり、行政・観光協会と、民間・震災後設立団体は、現在の財源構成は異なるものの、国の財源、県の財源へ大きな期待があることが確認されました。

 このような中、復興庁は「概算要求に係る基本的考え方」の中で、昨年に初めて「記憶と教訓を次世代へ継承」を明記し、その重要性に光を当ててくれています。

(9月13日追記:復興庁令和4年度予算概算要求にて、「東日本大震災の教訓継承事業(1億円)が新規に計上されています)

 本報告書では、今後の伝承活動の継続性に不安を抱える組織が多くあることも確認されました。

 震災直後に掲げられた「復興の原則」や「復興への提言」と震災伝承の現状に関する理解が促進されることで、東北被災地における伝承活動が活発化し、必ず起こるとされる超大規模災害から一人でも多くの命を守れる力を生み出す一助になれば幸いです。

※復興庁の補助制度「被災者支援コーディネート事業」により一部補助
※協力:東北大学災害科学国際研究所佐藤翔輔准教授
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