12月14日(日)、今年度4回目となる「3.11トークセッション」を開催しました。

本トークセッションは、県内で震災伝承に取り組む実践者を迎え、被災の実情や教訓に学ぶとともに、伝承者同士の相互理解を深めることを目的に実施しています。今年度も「R7年度 みやぎ地域復興支援助成金」のご支援を受け、全5回の開催を予定しています。
第4回の今回は、「震災に向き合ういのちの授業 支えた教師の想い 学んだ生徒の今」をテーマに、震災直後から教育現場で子どもたちと向き合ってきた教員と、当時その学びを受けた元生徒が登壇しました。
震災から14年が経つ中で、教室で行われてきた実践が、どのように子どもたちの心を支え、やがて地域での行動や語りへとつながっていったのか。次の世代へ何を手渡していくのかを考える時間となりました。
<登壇者>
若生 遥斗さん(きずなFプロジェクト 副代表/3.11メモリアルネットワーク職員)
瀬成田 実さん(みやぎ教育相談センター 所長)
小山 綾さん(元・東松島市学生語り部TTTメンバー/保育士)
制野 俊弘さん(和光大学 教授)
ファシリテーターは、震災当時石巻市立小学校の教員として被災し、その後「震災復興教育」に取り組んできた徳水 博志さんが務めました。
はじめに、制野さんは震災後の学校現場で大切にしてきた実践として、①震災の事実と向き合うこと②仲間とともに受け止めること③地域社会の中で生きる力を育てることの3点を挙げました。
作文や日記による生活綴り方教育に加え、地域に伝わる「みかぐら」を取り入れた表現活動は、言葉にならない思いを身体で表す場となり、子どもたちの心の回復につながっていったといいます。この経験が、後の語り部活動へと結びついていきました。
中学時代に制野さんの教え子だった小山さんは、津波で大きく変わったまちの中で育った自身の経験を語りました。家族が無事だったことへの後ろめたさを抱える中、みかぐらは心を「無」にし、自分を保つ支えだったと振り返ります。
やがて語り部活動に参加し、「あなたたちは日本の宝だ」という言葉に背中を押され、語ることの意味に気づいていきました。現在は保育士として、子どもの命を守る立場から防災に向き合っています。

2人のお話を聞いた後、徳水さんは、小山さんの歩みを「心的外傷後成長(PTG)」の視点から捉え、中学生時代から現在に至る心の成長の過程において、みかぐらが重要な役割を果たしてきたのではないかと問いかけました。
その上で、小山さんには「みかぐらとは自分にとって何なのか」、制野さんには「みかぐらが持つ文化的・教育的価値」について質問しました。
小山さんは、みかぐらは今も変わらず心の支えであり、嫌なことや辛いことがあった時に自分を「無」にし、気持ちをリセットしてくれる存在だと語りました。中学生の頃だけでなく、社会人となった現在も、再び踊れる機会があればすぐに向かいたいと思えるほど、みかぐらは自身の人生に深く根付いていると述べました。
これを受けて制野さんは、震災後、子どもたちの心の不安や荒れが静かに広がっていった当時の学校現場を振り返りました。技術や競技ではなく「表現」を通して心を開く必要性を感じ、あえて難易度の高いみかぐらを教材として選んだといいます。鈴を振る動作に「大切な人を思い浮かべ、胸に抱いて踊る」という意味を重ねることで、子どもたちは亡くなった人や離れた仲間への思いを表現しながら踊り続けていきました。 制野さんは、振りやリズムを覚えるだけでなく、それぞれが思いを込めて踊る過程こそがみかぐらの教育的な力であり、長い時間をかけて向き合う価値のある教材だったと語りました。
瀬成田さんは、七ヶ浜町立七ヶ浜中学校での震災学習について報告しました。作文や聞き取りを重ねる中で、生徒たちは復興を「自分たちの町のこと」として捉えるようになり、目線は仙台方面ではなく、七ヶ浜の海や地域へと向かっていったといいます。
その学びを土台に、生徒主体の「Fプロジェクト」が立ち上がり、震災を伝え、地域と関わる活動は現在も続いています。
若生さんは、中学時代の職業体験で訪れたNPO法人レスキューストックヤードでの経験が、震災への向き合い方を大きく変えたと語りました。震災の話題に耐えきれず席を立つ被災者の姿から、震災は「終わった出来事ではない」と実感したといいます。
大きな被害を受けていない自分にも、伝えられることがあるのではないか。そう考えるようになり、現在は語り部として、また仕事として震災伝承に関わっています。


今回のトークセッションを通して浮かび上がったのは、震災学習は「過去を振り返るためのもの」ではなく、一人ひとりの生き方や選択、そして次の社会を形づくる力へとつながっていく学びであるということでした。
教師が手探りの中で紡いだ実践は、当時は気づかれにくくとも、確かに子どもたちの内側に根を張り、時間をかけて芽吹いています。そしてその学びは、語り部や保育士、教育者として、今度は次の世代へと手渡されつつあります。
震災を知らない子どもたちが増えていく中で、何を、どのように伝えていくのか。その問いに、唯一の正解はありません。しかし、「向き合い続けること」「語り合い続けること」「学びを止めないこと」そのものが、震災伝承の本質なのだと、今回の対話は教えてくれました。この場で交わされた言葉や実践が、次の教室や地域へと受け継がれていくよう、今後も取り組んでまいります。
ゲストのみなさま、会場にお越しいただいたみなさま、ご参加いただきありがとうございました。
【次回予告】
日時:2026年2月中旬 13:30~14:30(予定)
登壇予定:調整中