3.11メモリアルネットワークは、学校や教職員による震災伝承と防災啓発を重視しています。11月2-4日には初めて全国の教職員を対象にした視察研修を実施しました。岩手と宮城の学校被災の現場を中心に広域を巡り、被災当時の生徒や教員とともに現場で語り合い、教訓を共有するのが特徴です。
今後も年に2-3回、学校現場、教育現場の皆さん向けの視察研修を実施する予定です。2025年はとりあえず8月6-9日の3泊4日の日程が固まっています。
代表理事武田真一が宮城教育大学で2019年度から年2回実施する「311被災地視察研修」(3泊4日)の企画に準じた内容です。宮教大研修は4-5倍の申し込みがあり落選者が多数になることから、3.11メモリアルネットワークとして2泊3日に圧縮した企画を立て、実施しました。
北海道から沖縄まで15都道県から20人(男性8人、女性12人)が参加。小中高校・特別支援学校の校長、教頭、主幹教諭、養護教諭など20代から60代まで幅広い教職員が集まり、学校避難の教訓が伝わる釜石市鵜住居地区、児童と教員84人が亡くなった石巻市大川小遺構、教職員間の事前の話し合いや対応が命運を分けた南三陸町戸倉小跡地、石巻市門脇小遺構などを巡りました。
回答があった17人全員が「期待以上だった」と答えています。締めくくりのワークショップでは「想定外を想定することの大切さを知った」「非常時に生きる日常の授業や指導を大切にしたい」「震災を伝え継ぐ意識を広く共有したい」などと研修成果を基にした決意を確かめ合いました。
・「私は今回の研修に参加するまでは、防災教育も数多くある仕事の一つという認識でしかなかった。しかし今は、形式的な避難訓練を実施していた自分が恥ずかしく、情けなく思っている。研修では、語り部の方から直接話を聞くことや、鵜住居小児童の避難経路を歩くこと、戸倉小児童たちが避難し一夜を過ごした高台で話を聞くことなど、現地だからこそ感じるものがあり、伝わるものがあった。多くの被災地を訪問し、様々な教訓を学んだが、助けることができなかった命からの教訓は非常に重く感じた」(愛知県・高校教諭)
・「十分すぎるくらいの、中身の濃い、濃すぎる2泊3日の研修だった。本当は、許されるなら、4日でも5日でも1週間かけて自分の心と向き合える時間があったら更に良かった。2泊3日ではもったいない。ただ、今回は年2回の宮教大主催の研修に準じた、特別企画である。それを思えば、ありがたかったの一言に尽きる。念願かなっての被災地視察研修だった。時期も最高に良かった。いろいろな災害が少ないと言われている場所に住み、自然災害の危機感から遠のいている時差ボケのような我々こそ、多くの人に被災地研修に行ってもらい、私のように衝撃を受けてこそ、「子どもの命」に真剣に向き合える教員の育成につながるのではないかと痛感した」 (栃木県・小学校教諭)
・「教師としての目線だけではなく,人間の生死についても考えさせられた。伝えることの意義を強く感じた。多くの犠牲から得た教訓を伝える必要がある。一つは授業の中で子どもたちに直接訴えかけ,考えさせること。もう一つは来年度の防災教育を計画的に実施できる骨子をつくること。特に二つ目では,計画を立てる段階で職員の協働性を高められるようにしたい。最悪の事態を想定しながらの避難先設定や起こりうる危険性について,職員皆で話し合う場を設けたいと考える。その過程で今回いただいた資料や写真は大変役立つものになるだろう。「いずれ誰かがやるだろう」「ここはそんなに大きな津波は来ないだろう」私自身も陥っていた様々なバイアスから抜け出すきっかけとなる研修だった。今回の研修で学んだことを自分なりにまとめながら「想定外だった」で失う命がないよう,自分にできることをひとつひとつ実践しようと思う」(北海道・中学校教諭)